一般社団法人 再生医療品質基準協議会 制定基準(原文)
一般社団法人再生医療品質基準協議会
制定:2026年9月3日 / 施行:同日
前文(制定の趣旨)
ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)は、リン酸基の結合位置及び糖部の立体配置によって識別すべき化合物であり、略称又は総ヌクレオチド量だけでは原料の実体を確定できない。製造工程に由来する前駆体、異性体及び保存中の加水分解物を目的成分から分離し、標準物質まで遡れる検査資料によって品質を説明する必要がある。本協議会は、健康食品の表示一般ではなく、NMN原料の構造同定、純度設計及びロット判定に焦点を置く基準として本書を制定する。
第1条(目的)
本基準は、NMNを品質管理対象とする原料、中間品及び最終製品について、化学的同一性、異性体、工程・分解由来不純物、安定性、検査法、成績書及び表示との対応を評価する要件を定める。
第2条(適用範囲)
本基準は、β-NMNを意図して製造又は配合する粉末、溶液、調製原料、中間品及び最終製品に適用する。ニコチンアミドリボシド、ニコチンアミド、他のモノヌクレオチド又は総NAD関連物質をNMNとして代替評価しない。
第3条(用語の定義)
- 1. β-NMN:ニコチンアミドリボース部分の立体配置及びリン酸基の結合位置を特定した目的成分をいう。
- 2. 位置関連物質:リン酸基の結合位置が目的とするNMNと異なる化合物をいう。
- 3. 前駆体・分解物:製造原料、未反応物又は加水分解等によって残存若しくは生成するニコチンアミド関連物質をいう。
- 4. NMN実量:水分、対イオン、担体その他の寄与を除き、指定したNMNとして定量した量をいう。
- 5. 識別性:目的成分を異性体及び関連物質から区別して判定できる試験法の能力をいう。
第4条(要求事項)
1 同一性確認
事業者は、化学名、構造式、リン酸結合位置、β体の指定及び供給形態を原料規格書に記載すること。同一性確認では、クロマトグラフィーによる標準物質との比較に加え、質量分析、核磁気共鳴又はリン酸部位を識別できる分光学的方法を組み合わせる。吸収又は呈色のような非特異的応答のみでNMNと判定せず、標準物質の由来、値付け、ロット及び保管履歴を残す。
2 純度及び不純物プロファイル
β-NMNの純度とは別に、α体、位置関連物質、ニコチンアミド、ニコチンアミドリボシド、未反応原料、工程副生成物及び保存中の分解物を検討すること。採用する化学合成、酵素反応その他の経路ごとに監視対象を選び、事業者が規格値と未同定ピークの扱いを定め、その根拠を工程情報及びロット実績から提示する。面積百分率を質量純度に用いる場合は応答差と水分等の質量収支を評価する。
3 異性体、塩及び原料形態
β体とα体を分離又は識別する手順を定め、異性体比を総NMN量で置き換えないこと。遊離形、塩、水和物又は担体を含む調製原料として供給される場合は、対イオン、水分及び担体量を確認し、NMN実量への換算式を承認する。供給者、反応経路又は精製条件の変更時には、異性体及び関連物質のプロファイルを変更前ロットと比較する。
4 安定性及び保存
水分、温度、光、pH、溶解状態及び共存成分がβ-NMN残存量並びに前駆体・分解物へ及ぼす影響を評価すること。粉末の吸湿、液状工程の保持時間、製造途中の待機及び開封後を、採用する容器包装と対応させて試験する。保存方法及び期限は実測推移から事業者が設定し、逸脱保管があったロットは再試験又は影響評価の記録を経て判定する。
5 検査法及び成績書
定量法はβ-NMNを異性体及び主要関連物質から識別でき、製剤基材からの抽出回収を確認したものとする。選択性、真度、精度、直線性、定量範囲及び試料溶液中の安定性を用途に即して検証する。成績書には検体段階、ロット、化学形態、方法識別、標準物質、結果、単位、規格及び判定を記し、供給者試験と受入試験又は最終製品試験を混同しない。
6 製造・ロット管理
反応、精製、濃縮、乾燥及び包装のうち、β体比率、加水分解物、水分又は残留工程物質に影響する操作を特定すること。原料ロットから製品ロットまで秤量、工程内試験及び出荷試験を対応付ける。外部検査を利用する場合は、依頼項目、検体形態及び異性体識別の可否を明らかにし、結果を対象ロットへ結び付ける。
7 表示との整合
表示するNMN量は、原料重量、投入量又は純度値ではなく、指定したNMN実量のどれを基礎にするか明示すること。一日摂取目安量当たりの値を、原料力価、秤量記録、換算表及び最終製品の検査結果と照合する。成分名称、β体の取扱い、保存条件及び開封後の記載は、規格書と安定性資料で用いた対象及び条件に一致させる。
第5条(評価区分)
- 適合:β-NMNの構造と供給形態が特定され、異性体、関連物質、実量、安定性及びロット成績が表示まで連続している。
- 一部適合:主要な同一性と実量は確認できるが、未同定ピーク又は開封後資料の一部が不足し、影響評価と是正計画が記録されている。
- 不適合:略称若しくは非特異的試験のみで同一性を判定する、異性体を区別できない、又は原料投入量を製品中のNMN実量として扱う。
第6条(運用)
事業者は、構造確認資料、製法別不純物規格、ロット別成績書、安定性資料及び表示照合記録に基づき自己適合宣言を行うことができる。本協議会は申請により、選定ロットの標準物質から最終表示までを確認する。製法、供給形態、分析法、処方又は包装を変更した場合は適合性を再評価する。
附則
本基準は2026年9月3日から施行する。
※本基準は情報公開・品質管理のあり方に関する評価基準であり、個別製品の効果効能・安全性を保証するものではありません。