一般社団法人 再生医療品質基準協議会 制定基準(原文)
一般社団法人再生医療品質基準協議会
制定:2026年9月9日 / 施行:同日
前文(制定の趣旨)
再生医療関連の品質管理において、製造記録や検査成績が整備されていても、ロットの範囲設定が不適切であれば、一部の不良品が全体の判定を通過したり、逆に健全な製品が不当に排除されたりする。ロットの分割・統合・判定の判断基準は組織ごとに異なり、その考え方が公開されない場合、情報の非対称性が生じる。本基準は、ロットの設定から判定、出荷可否の決定に至るまでの一連の手続を統一的な枠組みで評価するために制定する。
第1条(目的)
ロットの構成、サンプリング、検査判定、出荷可否の決定及び記録の保存に関する要件を定め、製造物の一貫した追跡と品質状態の明確な区分を可能にすることを目的とする。
第2条(適用範囲)
対象
再生医療に関連して取り扱われる経口製品、細胞機能関連製品又はこれらの原材料について、製造、包装、保管若しくは出荷の各段階で実施されるロット管理に適用する。受入時の原料ロットの確認、工程途中での仕掛品ロット、最終製品ロットのいずれも対象とする。
第3条(用語の定義)
- 1. ロット:同一の製造条件で製造され、均質性が確保された一連の製品又は原材料の集合。製造番号、管理番号等により識別される。
- 2. ロット判定:当該ロットが規格に適合するか否かを、検査結果及び製造記録に基づいて決定すること。
- 3. 均質性:同一ロット内の各単位が、管理すべき品質特性について許容される範囲内で一致している状態。
- 4. サンプリング計画:ロットから検査用試料を採取する位置、数量及び時期を定めた計画。
- 5. 出荷可否決定:ロット判定の結果に基づき、出荷、保留又は不適合の区分を確定すること。
第4条(要求事項)
1 ロットの設定
事業者は、原料の受入、中間工程、最終製品の各段階でロットの範囲を明確に定め、ロット番号の付番方式を文書化すること。異なる製造日時又は異なる製造条件で製造されたものを同一ロットとして扱わない。ロットの大きさは、均質性を確保できる範囲で設定し、その考え方を文書に記録する。ロット番号は製造記録、検査記録、出荷記録のすべてに共通して使用すること。確認方法はロット設定基準書及び製造記録により行う。
2 ロットの均質性確認
事業者は、ロット内の均質性を確認するための管理項目と管理方法を定めること。混合工程がある場合は、混合時間、混合速度等の条件を固定し、偏りが生じないことを確認する。ロットの先頭、中間、末尾から試料を採取し、外観、含量又は物性に差がないことを確認する方法をあらかじめ定める。確認方法は、製造記録及び工程内検査成績書により行う。
3 サンプリング計画の設定
事業者は、ロットの大きさに応じたサンプリング計画を文書化すること。検査の目的(同一性、純度、安全性関連項目等)に応じて試料量を定め、統計的な考え方又は合理的な根拠に基づいて採取位置を決定する。サンプリング計画には、試料の採取者、採取時期、保存条件及び残余試料の保管方法を含める。確認方法は、サンプリング計画書及び採取記録により行う。
4 ロット判定の実施
事業者は、ロットごとに以下の情報を照合して判定を実施すること。検査成績書、製造記録、包装記録、保管中の環境記録を突き合わせ、すべての項目が規格に適合する場合に適合と判定する。一項目でも規格に適合しない場合は不適合とし、一部の項目で疑問がある場合は保留とする。判定は、品質管理部門の責任者が行うこと。確認方法は、判定記録及び承認文書により行う。
5 不適合ロットの処分
不適合と判定されたロットは、他のロットと明確に区分し、誤って出荷されることを防止するための措置を講じること。不適合ロットの内容によっては、再検査、選別又は用途の変更等の対応を検討できるが、その場合も事業者が基準を定め根拠を提示すること。出荷停止、返品、廃棄等の処分区分を文書化し、処分の記録を保存すること。確認方法は、不適合管理記録及び処分記録により行う。
6 ロットの追跡
事業者は、原料ロットから最終製品ロットまでの追跡が可能な記録を整備すること。各工程で使用した原料のロット番号、製造日時、担当者、設備を記録し、製品ロットから原料ロットへ遡れること。出荷先が判明している場合は、出荷先への追跡も可能とすること。記録の保存期間は事業者が定め、開示請求に応じられるよう管理すること。確認方法は、追跡台帳及び製造記録の連結状況により行う。
7 記録の管理
ロット判定に関するすべての記録は、改ざん又は紛失を防止するため、アクセス権限を設定して管理すること。電磁的記録の場合は、時刻の同期、変更履歴の保存及びバックアップの実施が必要である。紙媒体の場合は、保管場所の環境管理と施錠管理を行うこと。記録の保存期間は、製品の使用期間等を考慮して事業者が定め、その根拠を文書化すること。確認方法は、記録管理規程及び監査記録により行う。
8 ロット判定の見直し
事業者は、ロット判定の方法について定期的に見直しを行うこと。製造方法の変更、設備の変更、クレームの発生又は検査方法の変更があった場合は、その都度、ロット設定及びサンプリング計画の妥当性を再評価する。ロット判定の基準そのものに問題が認められた場合は、速やかに基準を改訂し、関係者へ周知すること。確認方法は、見直し記録及び改訂履歴により行う。
第5条(評価区分)
- 適合:ロットの設定、均質性確認、サンプリング、判定、記録管理のすべてが適切に実施されている。
- 一部適合:ロット判定の基本的な枠組みは確立しているが、記録の一部欠落又はサンプリング計画の文書化不足等、補完可能な事項がある。
- 不適合:ロットの範囲が不明確、判定記録がない、又は追跡が不能であり、品質状態の確認ができない。
第6条(運用)
自己適合宣言は、ロット判定に関する手順書と実施記録を一組にして行う。本協議会は、申請されたロット設定基準、サンプリング計画、判定記録の整合性を確認する。製造方法又は設備を変更した場合は全体を再評価し、定期見直しではロットの大きさと均質性の関係を点検する。
附則
本基準は2026年9月9日から施行する。
※本基準は情報公開・品質管理のあり方に関する評価基準であり、個別製品の効果効能・安全性を保証するものではありません。