一般社団法人 再生医療品質基準協議会 制定基準(原文)
一般社団法人再生医療品質基準協議会
制定:2026年9月8日 / 施行:同日
前文(制定の趣旨)
細胞加工の品質判断では、情報が少ない工程や複数の要因が重なる場面を扱う。評価表の点数だけに依存すると、重大な事象が低い発生見込みに埋もれ、確認できていない事項まで受容済みとなることがある。本基準は、リスクの評価理由、不確かさ及び管理後に残る課題を記録し、判断の経緯を説明できるよう制定する。
第1条(目的)
品質リスクの課題設定、分析、管理策の選択、受容判断及び再評価の手順を定める。評価結果を変更、逸脱及び日常管理の判断へつなぎ、採用した管理条件が証拠とともに追跡されることを評価する。
第2条(適用範囲)
再生医療・細胞加工に関わる原料、工程、施設、試験、搬送、供給者及び品質情報の不確かさを扱う判断に適用する。新規工程の検討、通常運用及び異常発生後の評価を含む。個別の規格判定や必要な記録をリスク評価のみで代替しない。
第3条(用語の定義)
- 1. 評価課題:何について、どの品質上の判断を行うかを明示した問い。
- 2. 事象経路:起点となる要因から工程内の変化を経て品質上の結果に至る関係。
- 3. 不確かさ:情報不足、推定又は評価者間の見解差によって判断が定まらない部分。
- 4. 管理策:事象の発生、波及又は見逃しを抑えるために選ぶ工程上の措置。
- 5. 受容判断:管理後に残るリスクと未確定事項を、権限者が条件付き又は条件なしで引き受ける決定。
- 6. 再評価条件:評価の前提が変わったと判断して検討を再開する条件。
第4条(要求事項)
1 課題、範囲及び責任
評価を始める前に課題、対象工程、対象ロット、判断の使用先及び評価責任部門を定めること。工程、試験及び品質判断の知識を持つ職務を参加させる。評価計画と工程図を照合し、範囲外とした工程や外部業務には理由を付して境界の抜けを確認する。
2 事象経路の洗出し
誤識別、汚染、条件変動及び記録欠落等について、原因と品質上の結果を段階的に整理すること。現行の管理策がない場合とある場合を区別する。工程観察、逸脱履歴及び試験資料を用いて経路を確かめ、複数工程で同じ設備や情報源に依存する共通要因も調べる。
3 証拠と不確かさの記載
各経路に使用した資料の対象、版及び適用条件を記し、観測事実と推定を分けること。データがない状態を発生しない根拠にしない。評価記録には不足情報、その取得方法及び取得までの暫定管理を残す。反対の所見や評価者間の見解差も削らず、判断への影響を説明する。
4 評価尺度と順位付け
事業者は重大性、発生の見込み及び必要に応じ検出可能性の区分と判断条件を定め根拠を提示すること。点数を用いる場合は同点でも事象の性質を個別に審査する。尺度表と根拠資料を照合し、結果を望む区分へ合わせる採点や、合計値だけによる重大事象の除外を認めない。
5 管理策の比較と実装
候補となる管理策は、対処する事象経路、実施条件及び新たに生じる品質上の課題を比較して選ぶこと。担当部門、導入期限と確認方法を決め、必要な変更管理へ登録する。設計資料と導入後の観察から管理策の実装を確認し、予定段階の措置を実施済みとして再採点しない。
6 残存事項の受容判定
管理策の確認後に残る経路と不確かさを示し、権限者が受容、追加管理又は実施保留を判断すること。条件付きの場合は適用ロット、監視事項及び失効条件を明記する。受容記録を使用許可や工程指図と照合し、評価の承認を個別ロットの出荷承認と混同しない。
7 結果の伝達と実行確認
評価で決めた管理条件は実際に作業する部門、試験担当及び関係する委託先へ伝えること。必要な内容を手順と確認票に展開し、受領及び実行を確認する。評価番号から管理記録を辿り、報告書に記載されただけで現場の監視や保留条件へ反映されていない事項を是正する。
8 再評価と履歴保存
新たな逸脱、供給変更、監視傾向又は不足資料の入手を再評価条件へ組み込むこと。事業者が見直し時期と資料保存期間を定め、旧判断の前提を保持する。管理策が成立しない場合は対象範囲を再設定して追加処置を判断し、旧版との差と関連する是正番号を記録する。
第5条(評価区分)
- 適合:事象経路と証拠が対応し、不確かさを含めた受容条件が実装され、再評価へつながっている。
- 一部適合:主要経路の管理と受容条件は確認でき、補足資料の整備等に限定した未完了事項が管理されている。
- 不適合:情報不足を無視する、予定の管理策で受容を決める、又は点数だけで重要な経路を審査対象から外す。
第6条(運用)
自己適合宣言には評価の対象工程と用いた判断尺度を示す。本協議会は申請された課題について、事象経路から受容条件の実行までを確認する。見直しでは想定外の事象と評価時の前提を比較し、尺度、参加職務及び再評価条件の妥当性を検討する。
附則
本基準は2026年9月8日から施行する。
※本基準は情報公開・品質管理のあり方に関する評価基準であり、個別製品の効果効能・安全性を保証するものではありません。