一般社団法人 再生医療品質基準協議会 制定基準(原文)
一般社団法人再生医療品質基準協議会
制定:2026年9月3日 / 施行:同日
前文(制定の趣旨)
細胞培養では、培養装置内の温度、ガス、湿潤状態、培養室の清浄状態及び作業介入が時間とともに連続して影響し合う。終了時の単独測定だけでは、扉開放、供給停止、センサー偏り又は局所的な環境変化を説明できない。また、装置表示値と独立した確認値の関係が不明であれば、培養経過の評価に情報の空白が生じる。本協議会は、培養開始前から終了までの環境を工程単位で把握し、異常時の範囲判定を可能にするため、本基準を制定する。
第1条(目的)
本基準は、細胞培養に用いる室、培養装置、ガス供給及び環境観察に関する管理項目、責任、記録、判定及び是正の原則を定め、培養環境の履歴を説明可能にすることを目的とする。
第2条(適用範囲)
細胞の播種、増殖、分化、維持、回収前保持その他の培養工程と、その工程に使用するインキュベーター、閉鎖型培養装置、培養室、ガス供給系、監視センサー及び環境記録に適用する。短時間の装置外操作は、培養環境への介入として含める。
第3条(用語の定義)
- 1. 「培養環境」とは、培養中の細胞に接する装置内条件及び当該条件を支える周辺室の状態をいう。
- 2. 「定常域」とは、事業者が工程設計に基づいて設定した管理規格内で環境が維持される状態をいう。
- 3. 「環境介入」とは、扉開放、容器出入れ、給水、清掃、保守又はガス交換により培養環境へ変化を与える行為をいう。
- 4. 「回復確認」とは、介入又は警報後に管理対象が所定の状態へ戻ったことを記録で確かめることをいう。
- 5. 「同時在室ロット」とは、同一装置又は共通環境に同じ時間帯に置かれた培養単位をいう。
第4条(要求事項)
1 環境設計と管理責任
事業者は培養工程ごとに管理対象、規格、監視頻度、警報、確認責任者及び代替手段を定め、その科学的又は工程上の根拠を文書化すること。装置担当者と培養判定者の役割を手順書及び装置台帳で確認する。
2 培養開始前の状態確認
使用前に清掃状態、前ロットの退出、槽内の異物、消耗品、ガス接続、センサーの使用可能状態及び予定設定を確認すること。培養容器の配置が測定点、気流又は熱分布を妨げないことを配置記録又は装置内図で照合する。
3 連続監視と独立照合
温度、ガスその他工程上必要な項目は、事業者が定めた規格と頻度で記録し、開始、終了及び介入時刻と同期させること。装置表示のみに依存する場合はその妥当性を示し、必要に応じ独立計測又は既知の基準器との照合結果を保持する。
4 扉開放と作業介入の管理
扉開放、容器移動、観察、培地交換、給水及び保守は、対象ロット、実施者、開始・終了、理由及び回復確認とともに記録すること。同時在室ロットを一覧できるようにし、予定外介入があった場合は共通環境への波及を評価する。
5 室内環境と装置周辺の管理
装置吸排気部の閉塞、結露、漏水、ガス容器の残量・切替え及び培養室の清浄状態を点検すること。環境モニタリング結果、清掃記録及び設備警報を培養期間と重ねて確認し、装置内値が正常でも周辺異常を評価対象から除外しない。
6 警報、欠測及び復旧判定
警報、通信断、センサー欠測、設定変更又は供給停止が生じた場合は、発生時間、継続範囲、代替測定、同時在室ロット及び復旧操作を記録すること。品質部門は工程固有の根拠により継続、保留又は中止を判定し、単に表示が戻ったことだけで閉鎖しない。
7 傾向評価と是正追跡
警報に至らない変動、回復時間、扉開放、ガス消費及び装置間差を培養単位を越えて定期的に評価すること。偏り又は反復が認められた場合は、配置、作業方法、保守又は監視方法の是正を定め、次回培養の記録で実施状況を追跡する。
第5条(評価区分)
- 適合:培養期間と環境記録、介入、警報及び対象ロットが対応し、異常の範囲と判定を説明できる。
- 一部適合:主要環境は管理されているが、介入又は周辺環境との照合に不足があり、影響評価と補完計画が承認されている。
- 不適合:培養期間の環境履歴が欠落し、欠測又は警報時の対象ロット、復旧状態若しくは判定根拠を特定できない。
第6条(運用)
事業者は培養単位ごとの環境レビューと装置別傾向評価を行い、自己適合宣言を行うことができる。本協議会は申請により、選定した培養記録と連続環境資料の時間的整合を確認する。本基準は培養方式、監視技術及び工程知識の更新に応じて見直す。
附則
本基準は2026年9月3日から施行する。
※本基準は情報公開・品質管理のあり方に関する評価基準であり、個別製品の効果効能・安全性を保証するものではありません。