一般社団法人 再生医療品質基準協議会 制定基準(原文)
一般社団法人再生医療品質基準協議会
制定:2026年9月3日 / 施行:同日
前文(制定の趣旨)
細胞加工工程で逸脱の兆候を認めた直後は、原因が確定していない一方、細胞、培地、資材、作業区域及び関連記録を通じて影響が広がるおそれがある。この段階で作業を漫然と継続し、対象物を混在させ、又は機器ログを失えば、その後の調査によって影響範囲を確定できない。初動に必要なのは原因を早急に断定することではなく、人、物、場所、設備及びデータを識別して隔離し、判断材料を保全することである。本協議会は、現場の安全確保と品質判断への引継ぎを統制するため、本基準を制定する。
第1条(目的)
本基準は、逸脱を発見してから正式な影響評価及び調査へ移行するまでの初動について、停止、隔離、連絡、証拠保全及び暫定解除の要件を定める。
第2条(適用範囲)
細胞・組織の受入、加工、培養、試験、保管、搬送及び出荷準備で認めた手順外作業、環境異常、設備警報、取違え、容器損傷、記録欠落その他の逸脱兆候に適用する。訓練中又は委託先で発生し、対象工程へ影響し得る事象を含む。
第3条(用語の定義)
- 1. 「初動封じ込め」とは、原因確定前に影響の拡大を止め、対象と証拠を管理下に置く一連の措置をいう。
- 2. 「保留」とは、品質部門の判断まで対象物の使用、移動又は出荷を禁止する状態をいう。
- 3. 「影響境界」とは、発生時刻、場所、設備、作業者、資材及びロットから暫定的に定めた調査対象の範囲をいう。
- 4. 「現場保全」とは、配置、機器状態、容器、残留物及び記録を不用意に変えず、調査可能な状態に保つことをいう。
- 5. 「暫定解除」とは、正式な最終判定前に、限定した条件の下で作業又は区域の使用を再開する判断をいう。
第4条(要求事項)
1 発見者の停止権限と通報
逸脱の兆候を認めた者は、品質への影響が不明な場合でも対象作業を停止し、責任者及び品質部門へ直接通報できること。通報経路、代替連絡先及び時間外対応を現場に備え、訓練記録、通報時刻、受領者及び最初の指示を逸脱票で確認する。
2 対象物の識別と物理的隔離
疑いのある細胞、原料、培地、資材、検体及び廃棄予定物には保留状態を明示し、適合品や別案件と混在しない区域又は電子的な在庫状態で隔離すること。容器識別、封印、保管場所、数量及び移動履歴を現物と在庫記録で照合する。
3 設備・区域の封じ込め
関連する培養装置、安全キャビネット、保管庫、搬送器具及び作業区域について、使用停止又は利用制限の範囲を表示すること。警報状態、清浄化前の配置、環境条件及び接続機器を写真、設備ログ、入退室記録及び区域表示記録により固定し、調査前の無断復旧を防ぐ。
4 データ及び検体の保全
機器の生データ、監査証跡、温度履歴、映像、紙記録、残余検体その他の消失し得る資料を識別し、上書き、廃棄又は追記から保護すること。保全一覧、複製時の照合記録、検体の受渡記録及びアクセス履歴により、取得元と保管者を追跡できるようにする。
5 暫定影響境界と関連ロット探索
発生前後の作業、人員、設備利用、資材ロット、空調系統及び搬送経路から暫定的な影響境界を設定し、境界外とした根拠も残すこと。製造指図、入退室、設備予約、資材払出及びロット系譜を横断照合し、関連候補を保留一覧へ反映する。
6 初動記録と正式調査への引継ぎ
初動中は推測と観察事実を区別し、発見状態、実施した措置、判断者、時刻及び未確認事項を時系列で記録すること。品質部門は、封じ込めの十分性、追加措置及び調査責任者を判定し、逸脱番号を付して是正及びロット判定へ追跡可能に引き継ぐ。
7 暫定解除の統制
設備又は区域の暫定解除は、対象物の隔離が維持され、必要な証拠が採取され、再開条件が文書化された場合に限り、品質部門が承認すること。解除票、清浄化記録、機能確認、再開後の監視記録を照合し、調査結果に応じて解除判断を再評価する。
第5条(評価区分)
- 適合:発見から停止、隔離、証拠保全、影響境界設定及び調査引継ぎまでが時系列で再構成でき、解除が統制されている。
- 一部適合:主要な対象は保留されているが、関連候補又は記録の一部に不足があり、追加封じ込めが承認の下で継続している。
- 不適合:作業継続により影響が拡大した、対象物が識別不能となった、重要な証拠が失われた、又は品質部門の承認なく解除した。
第6条(運用)
事業者は初動訓練及び発生案件の記録を点検し、自己適合宣言を行うことができる。本協議会は申請により、現場表示、保留品、時系列記録及び正式調査への接続を確認する。本基準は、初動で生じた遅延や証拠欠落の傾向を踏まえて見直す。
附則
本基準は2026年9月3日から施行する。
※本基準は情報公開・品質管理のあり方に関する評価基準であり、個別製品の効果効能・安全性を保証するものではありません。