一般社団法人 再生医療品質基準協議会 制定基準(原文)
一般社団法人再生医療品質基準協議会
制定:2026年9月8日 / 施行:同日
前文(制定の趣旨)
「不検出」や「下限未満」は、分析法が区別できる範囲を伴って意味が定まる。装置に導入した溶液の限界値を原料中の濃度としたり、報告上の下限を分析能力と同一視したりすると、検査範囲が誤って伝わる。本基準は、測定の限界、結果表記及び規格判定の関係を明らかにするため制定する。
第1条(目的)
細胞機能関連成分の含量及び不純物等の検査情報について、定量下限、検出限界及び報告表現を検体条件に結び付ける。JRQ-D-005の成績書公開を補い、数字が得られない結果をゼロや規格適合へ無条件に変換しない表示を評価する。
第2条(適用範囲)
原料、中間品及び最終製品の成績書、要約表、比較資料並びに包装に示す下限情報に適用する。外部機関の結果の転記、換算及び複数項目の集計を含む。限界値や算出係数は一律に定めない。
第3条(用語の定義)
- 1. 検出限界:所定の分析手順において、定めた確かさで検出可能とする濃度又は量の限界。[検出の用語定義](https://goldbook.iupac.org/terms/view/L03540)を参照し、定量の成立範囲とは区別する。
- 2. 定量下限:採用した測定手順で、用途に応じた精度等の要求を満たす定量範囲の下端。[定量範囲の用語定義](https://goldbook.iupac.org/terms/view/08022)に照らし、本基準では下側の限界を扱う。
- 3. 報告下限:結果を数値で記載するか下限未満等で示すかについて、依頼条件や報告規則で採用する境界。
- 4. 試料換算限界:秤取量、希釈及び抽出液量等を反映し、元の検体の単位へ換算した限界値。
- 5. マトリックス:検体中で測定対象と共存し、試料調製や検出に関係する成分のまとまり。
- 6. 判定保留:結果の範囲又は分析能力だけでは採用規格への適否を確定できず、判断を留める状態。
第4条(要求事項)
1 限界の種類を指定する表示
結果ごとに、併記する限界が検出、定量又は報告上のどれかを明記すること。略号を使う場合は日本語の意味を付し、単位、対象物質及び方法識別子を示す。原成績書と凡例を照合し、「下限」とだけ記された資料は試験機関へ種類を確認してから公開する。
2 設定根拠と実試料への適用
限界の算出法、採用係数、空試験、標準物質及び確認条件を分析法資料で確認すること。事業者は用途に応じた分析能力の規格を定め根拠を提示する。装置仕様の値と、前処理を含む方法の値を分け、マトリックスの妨害がある試料へ標準溶液だけの限界をそのまま当てはめない。
3 検体単位への換算
溶液中の濃度を原料又は製品中の量へ変換する際は、秤取量、抽出液量、希釈倍率及び採用した補正を記すこと。結果と限界に同じ換算を適用し、現物又は乾燥物の基準を合わせる。調製記録から試料換算限界を再計算し、追加希釈後も元の低い限界を表示していないか確認する。
4 結果状態と記号の対応
未検出、検出されたが定量条件を満たさない状態、定量済み、未測定及び測定不能を区別すること。「不検出」「ND」等には採用した判定規則と限界の種類を付す。空欄や一つの記号へ異なる状態をまとめず、機関の報告規則と結果一覧を突き合わせて転記を確認する。
5 下限未満の数値処理
下限未満の結果を含む合計、平均又は割合を示す場合は、採用した代入規則、除外の有無及び算定上の制約を明記すること。代入値は実測値と分けて保持し、ゼロを代入した計算を不含有の証拠としない。集計対象一覧と計算記録を確認し、報告下限の変更によって見掛けの集計値が変わる場合は説明する。
6 規格との照合と保留
事業者が設定した判定規格に対し、試料換算限界と得られた結果の範囲で適否を判断できるか確認すること。判断に必要な範囲を分析法が区別できない場合は保留とし、未検出だけを理由に適合と表示しない。規格版、判定規則及び追加確認の要否を判定票へ記し、最終表示と照合する。
7 方法変更と項目別の下限
試験機関、検出方式、前処理又は検体組成が変わった場合は、方法別・項目別の限界を比較して表示への影響を評価すること。一斉分析でも各項目の値を確認し、最小の限界を全項目共通として掲げない。変更前後の結果を並べるときは、報告規則の違いを注記し、下限の違いを成分量の変化とみなさない。
8 公開記録と訂正の追跡
原成績書、限界の設定資料、試料換算表、判定票及び公開凡例を関連付けて保有すること。事業者が保存期間を定め、試験機関から下限や記号の訂正を受けた際は、要約表、集計及び製品説明への影響を調べる。訂正結果から利用された旧表示を追跡し、改訂後の限界が対象ロットに対応するか確認する。
第5条(評価区分)
- 適合:限界の種類、方法、試料換算及び記号の意味が対応し、規格判定と集計処理の根拠を確認できる。
- 一部適合:分析能力と判定は明確で、補助資料の参照整理等の不足について補完日が決まっている。
- 不適合:装置の限界を検体の値とする、下限未満を不含有と断定する、又は判定不能な結果を適合として公開する。
第6条(運用)
自己適合宣言には分析法版と報告規則を記す。本協議会は申請結果の限界種別と試料換算を確認する。検体組成や希釈手順の変更時に再評価し、定期見直しで凡例、集計時の代入及び保留結果を点検する。
附則
本基準は2026年9月8日から施行する。
※本基準は情報公開・品質管理のあり方に関する評価基準であり、個別製品の効果効能・安全性を保証するものではありません。